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2019.07.23
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「天空の音楽祭」に出演 石丸幹二さんスペシャルエッセイ
Ⓒ榎本洋輔
新居浜とわたし
新居浜生まれとはいえ、わたしの市民歴は短く、4歳のときに父親の転勤で千葉県市原市に引っ越した。この移動経路を聞くだけで新居浜の皆さんは、「ああ、住友化学ね」と思われるだろう。
父は愛媛県旧東予市(現西条市)出身。わたしとは真逆の志向を持ち、理系で、住友化学に勤めた。母は香川県生まれだから、双方の親戚は四国の瀬戸内海沿いに多く住んでいて、夏休みともなれば、列車を乗り継いでわたしたち家族はよく帰郷したものだ。
一人っ子のわたしは、東予に住む従兄弟たちとの時間が嬉しかった。四国の山々と田園風景の中で、泥まみれになって遊んだ。いたずらをして祖母にこっぴどく叱られた。高校、大学に進み、音楽にのめり込むにつれ、わたしは四国から遠ざかっていったが、実家では変わらず、四国のイントネーションの会話がなされ、電話で両親と語るわたしは、今でも無意識のうちに「四国ことば」になっている。
この10月、「えひめさんさん物語」の一環として、別子銅山跡地で野外コンサートを行うことになった。先日、下見に行ってきた。会場の東平地区は、遥か彼方に新居浜の街を見下ろす、山深い秘境だった、と言うと大げさかもしれないが、うっそうとした緑に覆われ、幻想的な趣きだった。そこにかつて5000人もの人々が住んでいたとは…。資料館で当時の記録を拝見しつつ、わたしは人間の生き抜く力に強く感銘を受けていた。
そのような新居浜の歴史を感じさせる場所で、昔、わたしを育んでくれた東予の自然を感じながらのコンサート。天候に恵まれることを祈りつつ、楽しみに待つことにしよう。
プロフィール
石丸幹二(Kanji Ishimaru)俳優・歌手
1965年新居浜市出身。
東京音楽大学音楽学部器楽科でサックス、東京藝術大学音楽学部声楽科で声楽を学んだのち劇団四季の看板俳優として数々の舞台作品に出演。退団後は、舞台、映像、音楽と幅広い活動を繰り広げる。
石丸幹二オフィシャルサイト