市民インタビュー
30年間愛されてきた愛媛県総合科学博物館
愛媛県総合科学博物館 学芸員 久松 洋二 (ひさまつ ようじ/新居浜市)さん
2024年11月に開館30周年を迎えた愛媛県総合科学博物館。動く恐竜の展示やプラネタリウムなど、子どもたちの記憶に残る展示が多く、長年愛され続けてきた博物館だ。学芸員の業務も広範囲に及ぶ。科学博物館の開館初期から、長年学芸員を務める久松洋二さんにお話を聞いた。
平成6年に開館し、600万人を超える来場者を魅了してきた愛媛県総合科学博物館。11月11日に、30周年の節目を迎えた。
久松さんは学芸員として科学博物館に赴任し30年目、開館当初から博物館を支えてきた。博物館の学芸員は美術系の学芸員と異なり、調査・研究に加えて、実験ショーの企画演出など来館者との交流も多い。久松さんは大学生時代にアルバイトをしていた科学館での実験ショーなどを経験し、科学を通して仕事ができることに魅力を感じて学芸員となった。これまでにもスーパーボールや静電気を使って、遊びながら科学を学べる実験ショーを企画。「たくさんの子どもたちが喜んでいる姿を見られることが何よりも嬉しい」と語る。
科学はどこか難しいものと考える人も多いかもしれないが、実は日常に密接に関係している。過去には久松さんが企画に携わり『昔の家電』をコンセプトにした特別展示を行ったことも。ブラウン管テレビや扇風機など、昭和時代の懐かしい家電を見ると、科学技術の発展を肌で感じられる。『今』を残し、『未来への発展』につなげる。それが博物館の学芸員が行っている大事な仕事なのだ。
愛媛県総合科学博物館といえば、動く恐竜やプラネタリウムのイメージを持つ人も多いだろう。開館当時から人気の展示ではあるものの、この30年で大きな変化を遂げている。恐竜は平成23年にリニューアル。開館当時、塗装で仕上げていた恐竜は、立体に変形させたラバー素材となり、より動きと質感にリアリティが増した。プラネタリウムは生解説となり、その日・その季節に合わせた内容で星空を説明、よりリアルに天体を感じられるようになった。
また、常設展示では愛媛県内で作られるNASA採用の『宇宙食』コーナーや、『来島海峡』の世界でも珍しい航行ルールを解説したジオラマなど、県内の科学に関する展示も含めて、毎年リニューアルし続けている。
2024年11月は『開館30周年記念特別展』と称し、東京大学特別教授でデザインエンジニア、愛媛県総合科学博物館の名誉館長でもある山中俊治氏の『未来を作る:科学とデザインの実験室』を開催。
「科学とデザイン」は、結びつきにくいかもしれない。しかし、3Dプリンタで作られた不思議な生き物たちや、最先端のロボットバイクなど、アートと科学を組み合わせたSF映画さながらの独創的な空間は、ワクワクすること間違いなし。
こうして、教育や科学技術の発展とともに、学芸員もさまざまな観点で調査研究を続けている愛媛県総合科学博物館。この施設に影響を受けて、科学者になった人もいるのだとか。開館時小さかった子どもたちも、今では子どもを持つ世代となり、大人になって再び訪れる人も多い。久松さんも「30年間、科学博物館に足を運んでくれてありがとう。そして、これからもずっと愛され続ける施設を目指していきたい」と語ってくれた。
山中研究室 + 新野俊樹 「Ready to Crawl」(21_21 DESIGN SIGHT 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」より )
撮影:木奥恵三
フリーペーパーHoo-JA! 2024年11月9日号 掲載
愛媛県総合科学博物館 https://www.i-kahaku.jp