市民インタビュー
もしもの災害に「ご近所コミュニティ」を!
新居浜市 市民環境部 危機管理課 副課長 新居浜市防災センター 所長 宇野 久美子 うの くみこさん
毎年9月1日は「防災の日」。防災意識も高まっている現在、新居浜市の防災センターの利用者も増加傾向にあるという。そんな防災センターの所長も務める宇野さんは、新居浜市の危機管理課副課長で、防災センター所長としても日々災害時の対応準備を進めている。そんな宇野さんに災害時の在り方や防災センターについて聞いた。
8月8日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表され、防災グッズを揃えた人も多いのではないだろうか。いつ、どこで、どんなことが起こるかわからない自然災害。そんな時にも皆が安全にいられるようにと日々業務をしているのが新居浜市防災センター所長の宇野さんだ。
宇野さんは災害対策の中でも、高齢者や障害者などサポートが必要な市民をどう把握して、どう避難するか、調査・管理の準備を進めている。これは昨年より新居浜市も急ピッチで進めている、国から努力義務化された「避難行動要支援者の個別避難計画作成」で、重要事業のひとつだ。その数は今把握できているだけでも、新居浜市内で1,200人を優に超える。しかし、自宅介護者や妊婦、乳児を含めると、5,000人は超えるのではないかとも想定される。そんな中で、すべての人の個別避難計画を作っていくことは多大な時間を要する作業。そこで大事になってくるのが、近年希薄になってきている地域コミュニティを取り戻すことだ。昔は近所の人と立ち話したり、集会所に集まって話をしたりと、近隣同士のコミュニティが密で、何かが起これば助け合える環境があった。しかし、今や自治会の加入者が低下し、隣人がどんな人かも知らないような関係である人が多い時代になってしまった。災害時は助け合いが必須。家族はもちろん、近所の人との交流も日頃から積極的にとっておく必要があるだろう。
何が起こるかわからない自然災害、危機管理が必要なのは地震だけでない。宇野さんが忘れられないと話すのは、平成16年に直撃した台風による水害だ。当時宇野さんは罹災証明を発行する部署で調査班として勤務していた。浸水被害の住宅に入らせてもらい、被害状況を確認する日々。独特な土の臭いと散乱する家財。「とにかく辛い仕事だった」と振り返る。だからこそ、災害が起こる前にできることを徹底しておく必要があると強く語る。それも、現在防災センターで開催中のパネル展『石川・能登半島地震』で伝わる自然災害の怖さを再度目の当たりにしたからだ。新居浜市職員が災害派遣として能登へ行き、災害状況のリアルを撮影してきた写真がたくさん展示されている。「家財はしっかり対策されていたとしても、建物自体が倒壊や浸水してしまえば、全てを失ってしまう。しかし、備えておけば助かる命はたくさんある」と宇野さん。
9月1日は防災の日。防災の日は災害や歴史を学び、未来へ備えようという大切な1日。防災センターは、リアルな映像を交えながら地震の揺れを体験できる『災害体験』や『煙体験』など、もしもの災害を実際に体験できる施設。学校の課外授業だけでなく、企業の危機管理の一貫で企業研修での利用も増え、市外・県外の利用者も多い。ぜひ防災の日をきっかけに『家族で防災センターで災害体験をしてみる』、『家族で災害時の避難計画を作る』、『近所の人と積極的に声を掛け合う』など、できることから始めてみよう。もしもの災害時に皆が助け合い、全員が無事でいられるように備えをしておくことも大事。また新居浜市の公式LINEアカウントでは災害時の情報発信も行われる。噂やデマに惑わせされないように、そして正しい情報で冷静に判断できるよう、今のうちから登録しておこう。
新居浜市防災センター (新居浜市消防防災合同庁舎)
フリーペーパーHoo-JA! 2024年8月31日号(Vol.480) 掲載