市民インタビュー
半世紀の記憶を絵にしたためて
洋画家 森本 洋 (もりもと ひろし/新居浜市)さん
元美術教師の森本さんは御年89歳。年齢を感じさせないほど元気で活動的だ。定年退職後は世界各国を訪れ、感動した美しい景色を作品として、たくさん描いてきた。そんな森本さんの思い入れのある作品たちを集めて、5月11日〜18日に卒寿記念の個展を開催する。

新居浜市内の小中学校の美術教師として教鞭をとり、今年10月に90歳を迎える森本さん。振り返れば人生のほとんどを美術に捧げてきた。すべての始まりは中学生時代にさかのぼる。美術の授業で周りの友人が花や風景を描く中、森本さんが描いたのは水辺。クラスの中でも1人だけ違う視点で描いた絵を先生に褒めてもらったことが嬉しく、美術が好きになった。そこから教員を目指すようになり、「美術教員になることは自然だった」と森本さん。
教員として勤め始めてまもなく、美術教員の先輩から「美術科の教員たる者、作品を描かなければ勤まらない」とアドバイスを受け、自分でも絵を描くようになった。当時の中学校は美術科の教員でも、国語などの他の教科で教鞭をとることも多く、作品を描く美術教師は少なかった。忙しい生活の中での作品制作は難しかったという。しかしそんな中でも森本さんは先輩のアドバイスを受けて日本を代表する美術団体『光風会』に作品を出展。一番最初に描いた作品は鹿森の風景。当時はまだ鹿森ダムはできておらず、緑の中に赤い橋が架けられていた。その景色が好きで足繁く通い、作品にしたためた。そして1962年には初入選を果たし、どんどん作品制作にのめり込んでいった。
作品制作の醍醐味は「題材となる景色を探しに、日本各地に旅行に行くことだった」と笑う森本さん。光風会に作品を出展するためにフェリーで福山に渡り「開通直後の山陽新幹線に初めて乗った時の感動は忘れられない」と語る。さらには美術にたずさわる友人たちと美術グループを作り、長期休暇になると制作旅行に。描いた作品は後日グループ展を開催するなど、仕事の合間を縫って多くの時間を絵に捧げてきた。
平成8年、39年に渡る教員人生を勤め上げた森本さん。そこからは海外に目を向け、主にヨーロッパの風景を描くように。感動した風景を写真に残し、感動を再度噛みしめながらの作品制作。海外の景色は本当に美しく、中でもベルギーのブルージュ、別名『愛の湖』(いずみ)と呼ばれる水辺に佇む教会には、特に感動したという。
「愛称がヨーロッパらしくておしゃれだよね。だから描き残しておこうと思って」
日本とは違う美しさに魅了され、何度も何度も海外に通った。そんな人生の多くをかけて描いてきた作品を、今年90歳になる卒寿を記念して個展で紹介。世界各国の感動した景色はもちろん、日常の中で美しいと思った風景を描いた作品が並ぶ。
「現代人は忙しい。だからこそ、こういった日常の癒しや世界各国の美しさを見て、少しでもリラックスして過ごしてもらえたら嬉しい」と森本さん。
鮮やかな色で奥深さや感動が表現された作品たち。異国を感じながら日々の喧騒を忘れ、ゆったりとした時間を過ごしてみては。
フリーペーパーHoo-JA! 2025年5月10日号 Vol.497 掲載
森本 洋 個展
■日時 2025年 5月11日(日)〜18日(日) 11:00〜18:00
■会場 木星舎 (新居浜市一宮町1-18-15-2F)
サン・マルコ広場 (20F)