市民インタビュー
ありそうで、あり得ない。そんな世界観を物語に
ショートショート作家 藤原 チコ ふじわら ちこさん
新居浜市在住のショートショート作家・藤原チコさん。3月14日に自身初のショートショート集「節目の一杯」を上梓。約4,000文字の中に、日常に潜んでいそうな「不思議」がキュッと詰まった作品が集められている。「節目の一杯」に込めた藤原さんの想いとは。
家には本がたくさん並び、本を読むことが好きで、そして活発な女の子だった幼少期。自分が表現できない感情を代弁してくれたり、自分とは異なる視点で世界が描かれていたり…。そんな感覚を楽しみながら、たくさんの本を読んだ。そして「いつか自分の小説を書きたい」そんな夢も見ていた。
藤原さんの転機は20代の頃。ひょんなことから「小説を書きたい」、そんな幼い頃の夢を思い出した。夢を叶えようと執筆活動をスタート。「作品のネタを考える時間が一番好き」という藤原さん。最初は短編小説を書くことから始め、電子書籍で作品を世に送り出してきた。それらの作品が出版社の目に留まり、ショートショート集『節目の一杯』の出版へ至った。
ショートショートは小説ジャンルの中のひとつ。約4,000から5,000文字という短い文章で物語を作っていく。1作品10分くらいで読め、読者に考えさせる余韻を残すのも魅力。ひとつのテーマを深く掘り下げる長編小説とは異なり、ブラックユーモアや風刺が作品の中に含められることも多い。藤原さんの作品コンセプトは『どこか共感できて、どこかが不思議』。日常の中で目に留まったものをテーマに、ありそうであり得ない世界を表現していく。
「限られた文字数の中で、どれだけ読者の想像力を掻き立て物語に惹きつけられるか、そのために何を書いて何を書かないのか、それが一番難しいポイント」
藤原さんの一番のお気に入り作品は『紫陽花』。ある日、花屋で出会った色の変わる不思議な紫陽花と、恋人のように心を通わせていく主人公。街に咲く紫陽花からインスピレーションを受け、執筆した物語だという。愛情、優しさ、命…、読む人を考えさせるキーワードをたくさん詰め込みたかったという本作。まさにありそうで、あり得ない世界…。
また、現在育児中でもある藤原さん。子どもと向き合う中で、子どもの好奇心が持つ力や、子どもならではの新しい発見に気付かされることも多かったという。
読者からの感想を聞くと、好きな物語、好きなポイント、全てが十人十色だった。物語の本質すらユニークな解釈をしている人もいた。どこかに不思議を描く藤原さんの作品だからこそ、読み手の捉え方は自由。「いろんな角度から想像しながら読んでほしい」
ショートショート集『節目の一杯』は、新居浜市内の明屋書店3店、また通販サイトAmazonで購入可能。小説好きの人はもちろん、普段小説を読まないという人も手に取りやすいショートショート集。好きな物語を探すも良し、自分に置き換えて世界観に入り込むもよし。なんだか不思議な世界観の中で、想像しながら自由に物語を楽しんでみてはいかが。
明屋書店 新居浜松木店、川東店
MEGA西の土居店にて発売中
つむぎ書房/1,760円(税込)
フリーペーパーHoo-JA! 2022年5月14日号 掲載