市民インタビュー
筆ペンで描く書「己書」の魅力
己書(おのれしょ)師範 大久保るみ子(おおくぼ るみこ)さん
「書く人も、見る人も心安らげる書」と語るのは新居浜在住の己書師範、大久保るみ子さん。2021年に偶然テレビで取り上げられていた「ありがとう」の己書を見て興味を持ったという。癌を患い、心のもやもやを感じていた日々。そんな時に癒されるような文字と絵が大久保さんの心に響いた。当時県内に2人しかいなかった己書の師範を探し、教室に通うことに。元々美術教員をしていた大久保さん。絵は好きだったものの、左利きのため、字にコンプレックスを抱えていたという。そんな大久保さんも『美しさ』ではなく『自分らしさ』で書く己書の魅力にはまっていった。描くこと・作ることを教えるのが好きで美術教員となった大久保さん。いつしか「己書をたくさんの人に伝えていきたい」と思うようになり、昨年師範を取得。自分の思うままに作品を作る時間、教室で教える時間。すべての時間が楽しくて「己書を伝えることが天職」と語る。
己書の基本は「円」(まる)。
文字もまるく書き、挿し絵も円をモチーフにした草花やお地蔵さんなどが多い。これらには円相が取り入れられている。円相は禅における『悟りや真理などの象徴』で、流れ続ける円の動きは執着から解放された心を表す。「円を描いていると、まるで写経をしているかのように心が落ち着く」と大久保さん。実際に自分で書いてみないとわからないのが魅力のひとつ。
己書の始まりは新しく、日本己書道場が開設されたのは2012年。名古屋在住の杉浦正さん(総師範)が、企業の社長などに人々を笑顔にし、絆を創るツールとして伝え、活動をイベントとして始めた。筆字を書くことで疲れを癒す活動を続けるうちに、徐々に口コミから全国へと広がり、現在では授業として取り入れている学校もある。
そんな己書、すべて筆ペンで書かれている。文字の強弱はもちろん、まるで筆のようにかすれまで表現できる専用の筆ペンがあり、誰でも簡単に始められる。大久保さんも新居浜市内各所で無料体験イベントを開催してきたが「字は苦手だから私には無理」という人も多い。しかしポイントさえ抑えれば、たった10分程度で書けてしまう。「まさか自分が書けると思っていなかった」と驚き、喜んでくれる参加者の声が一番嬉しいという。字に対するコンプレックスを抱えていた自身も、今や書くことが楽しくなっている。
そんな自身の経験を通して、字にコンプレックスを持っている人、人と比べてしまいがちな人、そんな悩める人に「美しさでなく自分らしく書ける己書を伝え続けていきたい」と語る。「字や絵が苦手でも、己書ならきっと誰かの心に刺さるはず。実際私がやってみて感動したのだから」と笑う。
「あたり前の毎日は、感謝でいっぱいの毎日。幸せいっぱいの毎日」
大久保さんが己書に出会い、モットーにしている言葉の一つ。そんな心温まる言葉と文字、そして絵。書く人も見る人も笑顔にする己書に、一度触れてみてはいかが。
Instagram https://www.instagram.com/rumiko.57/
フリーペーパーHoo-JA! 2023年2月25日号 VOL.444 掲載
まん丸とした可愛らしい文字と心温まる絵が、見る人をホッとさせてくれる「己書」。最近メディアや学校教育にも取り上げられるなど、注目されている。そんな己書の師範である大久保るみ子さん。自身の生活も大きく変えたという己書の魅力とは。