市民インタビュー
次世代にも伝えたい、ミニチュア太鼓台
口屋あかがねの会 (写真左)合田 芳人(ごうだ よしひと)さん (写真右) 加藤 基久(かとう もとひさ)さん
物語から飛び出してきたような、細やかな金糸装飾の面。軋む音や手触りが心地よい唐木。そんな本物に引けをとらないミニチュア太鼓台を作っているのが『口屋あかがねの会』の加藤さんと合田さん。
口屋あかがねの会が始まったのは約8年前。「口屋の歴史を次世代に伝えよう」と9名の地元仲間で結成された。その手段はかつて新居浜の中心地であった口屋の街並みの『ジオラマ再現』。
元禄4年(1691年)別子銅山を開坑した当初の運搬路は別子から宇摩郡天満に出るルートだった。元禄15年(1702年)銅山越から角石原〜立川〜新居浜浦のルートが完成、浜宿として『口屋』が設けられた。小さな漁村だった口屋は、別子銅山の重要な拠点に。ここから全国へ銅が船で送り出され、銅山で必要な食糧や資材も口屋に届くなど物流の中心となり、今の新居浜の礎を築いた。「新居浜発展の中心地を子どもたちに、そして後世に伝えたい」と願いを込めたジオラマ製作は約5年をかけて完成。現在も口屋跡記念公民館に展示されている。
ジオラマ完成後「このまま解散はもったいない。せっかくの有意義な会だったから、活動を続けよう」と始まったのが『ミニチュア太鼓台作り』だった。
幼い頃から太鼓台の面を真似てつくることが好きだった合田さん。そして木を使った工作が得意だったという加藤さん。そんな2人が作るミニチュア太鼓台。合田さんは紙粘土と京都から取り寄せた金糸で現存の面を再現したり、オリジナルデザインの面を作ったり…。阿吽の龍の迫力、装飾の巧妙さは圧巻の仕上がり。そして素材とリアリティを追求した、加藤さんの作る唐木。2人の力が合わさってできるミニチュア太鼓台。素材を熟知した細やかな作業、技術のみならず、2カ月で1台作ってしまうという製作スピードも驚きだ。
これまでは製作することを楽しんでいたが、5月に開催された『わくわく春まつり』に初めて出展。展示は話題となり、夏には新居浜駅の『ここくるにいはま』に展示したりと、たくさんの人の目に触れる機会が増えてきた。1/6サイズの本町太鼓台はひと際圧巻の作品。
口屋あかがねの会の次なる目標は『次世代の育成』。現在、太鼓台製作を学ぶ高校生や、見学に訪れてくれる方もいるが「もっとたくさんの人に太鼓台の魅力を伝えていきたい」と2人。しかし、細かい作業が大半を占める製作活動には、根気と太鼓台への愛情も必要。「自分たちが編み出した製作技術は、惜しみなく伝えたい」と意気込む2人なので、我こそはという方はぜひ一度、作業場である口屋跡記念公民館を訪れてみては。
1/6サイズ 本町太鼓台
新居浜太鼓祭りを前に、「ミニチュア太鼓台」の展示会を開催する「口屋あかがねの会」の加藤さんと合田さん。かつて新居浜の中心地であった口屋の歴史を残そうと活動を始め、そこから太鼓台作りに発展。口屋の歴史、そしてミニチュア太鼓台への想いを聞いた。