市民インタビュー
美しい垣生海岸を未来へつなぐ
一人で垣生海岸をボランティア清掃を行う 白石 昭 しらいし あきらさん
新居浜市の垣生海岸が、この2年半で美しい海岸に生まれ変わっている。ボランティアで海岸のゴミを毎日拾い集めているのが白石昭さん、74歳。雨の日以外、垣生海岸へ毎日通い、ゴミを集めている。子どもたちが安全に遊べ、美しい海岸へと生まれ変わった垣生海岸。日々の作業で真っ黒に日焼けした白石さんに聞く、垣生海岸清掃への想い。
白石さんがボランティアで清掃を始めたのは約2年半前。新型コロナの影響で勤務先の出勤日が大きく減少。「何もせず家にいるより、健康のために身体を動かそう」と思ったのがきっかけだった。自宅すぐ近くの垣生海岸は、ゴミも多く、お世辞にもきれいな海岸とは言えなかった。「垣生海岸で健康のためのゴミ拾い」、そんな気持ちから2020年に始まった。
「健康のために…」と始まった垣生海岸のゴミ拾いだが、当時の垣生海岸はあまりにも荒(すさ)んでいた。漁具や発泡スチロール、時にはタイヤや冷蔵庫、市外の指定ゴミ袋に入ったゴミも海岸に流れ着く。また漂流物だけでなく、釣りやバーベキューに遊びに来た利用者のゴミも多く残されており、一度使っただけのバーベキューコンロがそのまま捨てられていたことも何度かあった。
毎日海岸に出て、溜まりに溜まったゴミを拾い集め、半年が経過。やっとゴミのない垣生海岸になった。垣生が実家の県外在住者が数年ぶりに帰省した時、「垣生海岸、めちゃくちゃきれいになっとる」と、海岸の美しさに驚いたという。
「それを聞いた時は、本当に嬉しかった」
海岸のゴミ拾いと併せて行ったのが、隣接する弁財天公園の清掃。生い茂った雑草の中にはゴミも多い。そこで、掃除だけにとどまらず、芝生整備、雑草の草刈りまで行った。白石さんが公園整備をはじめてからは、公園内のゴミも激減。利用者のマナーは良くなってきているものの、それでも少なからずゴミは捨てられるという。
ひとりで活動をする白石さんに共感し、協力したのが垣生海岸を活動フィールドとして利用する『にいはま森のようちえん』。同園のスタッフが手続きを行い、この7月、個人活動では登録が難しかった愛媛県の『愛ビーチ・サポーター制度』に『あきらと森のようちえん』という団体名で登録された。
『愛ビーチ・サポーター』は県が管轄する海岸清掃ボランティア制度。これにより、自費で購入していた掃除道具などの提供や、白石さんが集めたゴミも、県の回収支援が受けられるようになった。
白石さんが集めたゴミの分別を、森のようちえんが手伝う。分別したゴミは愛ビーチ制度によって行政が回収、そんな流れがようやく出来上がった。白石さんの姿を見て、子どもたちも、自然とゴミ拾いを楽しみはじめた。小さな手でゴミを持ってきて「おいちゃん、これ、どこにいれるん?」と分別場所を聞く園児たち。「本当にかわいいよ」と微笑む白石さん。
白石さんの約3年に及ぶ活動で生まれ変わった垣生海岸は、SUPなどのウォータースポーツを楽しむ人や、最近では結婚の前撮りスポットとしても人気が高く、月に3〜5組がカメラマンとともに訪れるという。
「海岸へのゴミ投棄はずいぶん減ったが、まだゼロではない。そしてゴミは毎日海岸に流れ着く。ゴミ拾い活動に終わりはない」と白石さん。いまでも1カ月に集めたゴミは、多い時で軽トラックに積み切れないほどにもなる。
「遊び終わったゴミは、すべて持ち帰るのはもちろん、どこかに捨てたゴミも、流れ流れて海に行き、最終的に海岸に漂着する。不法なゴミの投棄も絶対にしないで」
『美しい海』を子どもたちへ、そして未来へ残すために、白石さんは今日も垣生海岸でゴミを拾い集めている。
〈白石さんが一人で集めた垣生海岸のゴミ。これで約1カ月分。〉