市民インタビュー
プールを使った養殖事業にICTを
ワクリエ新居浜 スマート陸上養殖推進グループ スマート養殖実験アドバイザー 白石 悠 しらいし ゆうさん
新居浜で新たな養殖プロジェクトが始まった。場所は廃校となった若宮小学校を活用した、ワクリエ新居浜の25mプール。全国的にも廃校プールを使った養殖事業はたくさん展開されている。そんな中、ワクリエ新居浜では、プールでの養殖にICTを用いた研究『スマート養殖』が進んでいる。
このスマート養殖を手がけるのは、水産事業アドバイザーとして複数の水産事業を手がける白石悠さん。養殖施設の設計や魚の病気対策など、水産に関する幅広い事業を展開する。そんな白石さんが魚に興味を持ったのは幼少期。きっかけは漁師家系の祖父の影響だった。祖父とともに漁船で海に出る日々。おのずと自分も将来は水産に関する仕事に就きたいと考えていた。大学では幼少期に読み影響を受けた『魚図鑑』の著者を後継して研究する教授がいる学校へ進学。そこで魚について研究してきた。研究していく中で、新居浜では見られないような魚をたくさん知り、『淡水魚』にも興味を持つようになった。
今回のスマート養殖で研究されているのは、琵琶湖の固有種で体長10cm程度の『ホンモロコ』。京都の料亭などでよく食べられるというが、四国の市場ではほとんど出回っていない。ホンモロコは水温などの環境変化に強いため、最初の研究魚種としては最適の魚。佃煮や天ぷらなどにして食べられることが多く、養殖最大のメリットは「脂をコントロールできること」と白石さん。餌や日照時間をコントロールすることで脂質を変えることができ、私たちの味覚にあった魚に養殖することができる。
養殖には『場所の確保が難しく、またお金がかかる』というイメージもある。実際に養殖すると1日300〜400万円もかかった魚もあり、コストもリスクも高い。そんな養殖事業を低コストで高い安全性のもとプロジェクトにするべく、ICTを活用した養殖実験を始めた。ICTを活用することで人件費が削減されるうえに、人との接触を避けることで外敵となる病気を予防することにも繋がる。そして、一番コストのかかる『水温を保つための熱交換費』も、気温などの環境を研究することで完全自動化を目指す。将来的には自動での餌やりや、ほかの水産物にも挑戦、スマホ1つで全てがコントロールできるようなシステム開発を目指している。
さらには今回の養殖プロジェクトで様々な研究を進め、多くの人が養殖に興味を持ち、養殖事業を始められるように商品化していく予定。
白石さんが水産について学んでいく中で、一番心配となっていたのは魚介類の汚染。水質汚染により、体内が汚染されている魚介類が非常に多くなっている。
「そんな汚染された魚を食べる世の中にはなって欲しくない。安全・安心の魚が食卓に届くように」と願いを込めて、今回のスマート養殖プロジェクトが始まった。今後はスマート養殖を通して、子ども向けの海洋生物の勉強会やイベントなども企画している。
冬眠から目覚め、これから本格的な繁殖シーズンとなるホンモロコの旬は5月。白石さんの活動で、新居浜産ホンモロコが食卓に並ぶ日も近い。
フリーペーパーHoo-JA! 2022年2月12日号(Vol.419)掲載
昨年11月からワクリエ新居浜でICT(情報通信技術)を使った養殖事業がスタートしている。近年全国的にも注目されている『廃校のプールを使った養殖事業』だ。そこにICTを活用し、低コスト・高い安全性の養殖ができる環境を作ろうとしている。そんなスマート養殖事業を展開するのは、水産事業を複数手がける白石悠さん。白石さんが描く『スマート養殖』とは。