市民インタビュー
「実物」ならではの魅力を感じてほしい
新居浜市美術館 館長 高橋 洋毅 たかはし ひろきさん
今年4月に新居浜市美術館長に就任した高橋洋毅さん。市の職員として7年前には、前身となる新居浜市立郷土美術館の閉館から新居浜市美術館への引き継ぎ作業にも携わった。
新居浜市美術館は、あかがねミュージアム内に平成27年に開館。銅板に覆われた近代的なデザインのミュージアムは、今や新居浜駅前のシンボルとなっている。しかし、昨年、一昨年はコロナの影響で休館も長くあり、やむなく開催中止に追い込まれる展覧会が相次いだ。
「準備にあたった学芸員は悔しい思いをしていたはず。ようやく大きな展覧会を開催できるようになった事が何よりも嬉しい」
オンラインでの展覧会も実施されるようになったが、やはり実物に勝るものはない。実物を自分の目で見ると、細やかな筆さばきや絵具の盛り上がりまでも感じられる。
「ディスプレイでは決してわからない細部まで味わえることが美術館の醍醐味。作品に込められた思いを感じ取ってほしい」
新居浜市美術館で6月26日まで開催中の「描かれた女たち 女性像にみるフォルム/現実/夢」展。ヌードにみられる女性の身体美に注目した『フォルム』、画家とモデルの関係を捉えた『現実』、画家の想像に託された女性像を描いた『夢』の3テーマに分かれて展示。
コロナ禍で社会の価値観やルールの変化に直面する時代の中で、近年注目されている「多様性(ダイバーシティ)」の観点から、あらためて近代以降に描かれた女性像の変遷を見つめてほしいとの思いで開催されている本展覧会。
明治時代から近年制作された新しい作品まで、公益財団法人日動美術財団所蔵の75点、そして市美術館所蔵の6点の女性像が展示されている。明治時代に日本で本格的に描かれ始めた油絵。西洋の伝統的絵画技法などを学び、油絵具で『いかに写実的に描くか』を追求した明治初期から、大正期以降は『いかに個性を出すか』と、画家自身のオリジナルな表現を重視するなど、油絵のスタイルも変化。描かれた女性像を通じて、そんな時代背景も垣間見れるよう、テーマごとに年代順に展示されている。日本の近代洋画を牽引した巨匠・藤島武二や、「麗子像」で知られる岸田劉生など有名作家も含め、制作時代も異なる作品が一堂に展示されているからこその魅力を感じる。
話はそれるが、高橋館長と新居浜駅前の関わりは深い。
「自分の祖母は戦後まもない頃、新居浜駅前で『双葉』という食堂を始めた。その後、両親は駅前でビジネスホテルを、兄はショットバーを経営していた。駅前の姿は大きく変わったが、我が家はずっと駅前の人たちに愛されて生きてきた。今、新居浜駅前にあるこの美術館で働いていることに不思議な縁を感じるし、とても感慨深い」
そんな駅前生まれ、駅前育ちの高橋館長は、
「館長就任後、初の展覧会。たくさんの人に足を運んでもらい、お気に入りの一枚を見つけてもらえれば」『新居浜駅前の移り変わり』を見てきた高橋館長の初仕事は、『女性像の移り変わり』の展覧会となった。
「描かれた女たち 女性像にみるフォルム / 現実 / 夢」
■日程 2022年6月26日(日)まで開催中 ※6/7(火)、13(月)、20(月)休館
■時間 9:30〜17:00 ※入場は16:30まで
■会場 新居浜市美術館 展示室1・2 (あかがねミュージアム2階)
■料金 一般 800円、 大高生 500円、 一般(ペア) 1,500円
中学生以下 無料
各種障がい者手帳等をお持ちの方(介助者1名含む) 無料
フリーペーパーHoo-JA! VOL.427 2022年6月11日号掲載
写真キャプション 藤島 武二 《婦人像》 1927年頃 公益財団法人日動美術財団蔵
今年4月にあかがねミュージアム内の新居浜市美術館長に就任した高橋さん。同美術館では6月26日まで「描かれた女たち 女性像にみるフォルム/ 現実 / 夢」を開催中。新館長の目線で、現在開催中の展覧会についてお話を聞いた。