市民インタビュー
文化芸術の歴史を伝え、未来へつなぐ
新居浜文化協会 会長 篠原 雅士さん
「2020年は感謝の1年だった」
2020年に創立から70周年を迎えた新居浜文化協会。新居浜文化協会は「芸能や文化を未来へ伝える」文化振興を目的に活動している。70年前といえば、まだ戦後まもなくの頃、日本中が貧困であっただろう時代。そんな中、住友の社員を中心に『新居浜文化倶楽部』が結成された。現在は住友や行政から独立し、新居浜文化協会として自主運営をしている。新居浜文化協会はさまざまなジャンルのサークルが所属しており、美術、芸能、文芸、郷土研究、茶道まで現在は66サークルが協会に加盟している。日頃の活動としては、市民を対象にした様々なワーク ショップや企画展、芸術祭の開催などを行っている。
篠原さんは華道創心流の現家元。華道創心流の家元の長男として生まれ、幼い頃から花のある環境で育ってきた。篠原さんの華道家としての分岐点は1970年の日本万国博覧会(大阪万博)。華道創心流として、大阪万博の会長室と迎賓館に花を生ける仕事を引き受けた。当時家元だった父、篠原楊月さんから「ここはお前に任せる」と、まだ20代、若手の雅士さんに重要な場所の装花を任された。緊張しながらも大仕事を果たした達成感とともに「この素晴らしい日本の文化を、未来へつないでいきたい」と感じるようになったという。大阪万博開催直後に新居浜華道協会会長に就く。そこから華道をより広げていく活動を50年以上も続けている。
父、楊月さんからは「知って自分のものとせず、与えて喜びを分かち合う」と教わってきた。いわゆる「自分の技術を秘伝とせず、たくさんの人に伝えて感動を分かち合うことが美しい」と。まさに、文化協会の指針である『和の精神』に繋がっている。その言葉を胸に、今まで文化活動を行ってきた。
文化活動は、作品をたくさんの人に見てもらうことがモチベーションとなる。しかし昨年は70周年記念事業の開催直前で中止を余儀なくされ、サークル活動も展示会もすべてが中止となった。昨年は自分のために花を生けたり、人数を制限した教室を開くのみ。今までと活動が一変し、戸惑いしかなかったと振り返る。経済が不安定な時は、文化より経済が重要視されがち。しかし、文化には感動や活力を与える力がある。それが人の不安な気持ちを少しでも軽くさせることができ、『文化は人の心を癒してくれる』と信じる気持ちが、2020年の作品作りへのモチベーションとなった。 「2020年は感謝の1年だった」と篠原さん。
創立70周年記念展が中止となった時、「何かできないか」とサポートしてくれたのは、いつもイベントやワークショップを共催している新居浜市文化振興課のみなさん。また文化協会事務局や協会メンバーのサポートもあって、1年間眠っていた協会が、この春から再び活気づく。3月には南海放送で『新居浜文化協会創立70周年記念番組』も放送された。篠原さんは「この喜びと感謝を持って、これからの活動にまい進していきたい」と熱く語ってくれた。
南海放送でオンエアされた30分番組に、60分の新たな映像を加えた『70周年記念番組 特別編』は、ケーブルテレビのハートネットワークで4月に放送。文化人たちの想いの詰まった番組は、きっと感動に包まれる90分になるだろう。
新居浜文化協会創立70周年記念番組「郷土文化の歩み」 特別編(90分番組)
4月10日(土)13:00〜 ハートネットワーク 701ch
4月11日(日)13:00〜 ハートネットワーク 701ch
フリーペーパーHoo-JA! 2021年4月10日号(Vol.399)掲載
地元新居浜で受け継がれてきた文化芸術、それらを未来へつなぐことを目的に活動する「新居浜文化協会」。昨年、創立から70周年の節目を迎えた。しかし、新型コロナウイルスの影響で、周年記念事業はすべて中止に。厳しい状況の中でも『文化は人の心を癒してくれる』という想いで活動を続けてきた。そんな新居浜文化協会の創立70年の想いを会長の篠原さんにお話を聞いた。